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ギレンの野望 アクシズの脅威v レビュー/評価

ギレンの野望 アクシズの脅威vとは

『ギレンの野望 アクシズの脅威v』は2009年2月12日に発売されたPSP/PS2ソフトで、ギレンの野望シリーズ第6作目となる作品です。

本作は、2作目『ギレンの野望 ジオンの系譜』から続くゲームデザインの完成形であり、前作『ギレンの野望 アクシズの脅威』のパワーアップ版に当たる作品で、テム・レイ編を含めた全14シナリオに加え、キャラクター5名、機体数は80以上が追加されたギレンの野望シリーズ随一のボリュームを誇る作品です。

本作の特徴(無印からの改善・追加点)

シリーズNo.1のボリューム

もともとシリーズで一番のボリュームだったアクシズの脅威(無印)ですが、そこに敵AIの思考能力の強化やパイロット、機体の追加がされたことで更にボリュームアップがなされました。

Z-MSVからネモⅡや百式改、ガンダムMk-Ⅲなどが。ガンダム・センチネルからはネロやゼク・アインなど、ゲーム後半を盛り上げるMSが多数追加されたことで彩りや機体の選択の幅が大きく広がりました。

また、終盤では『閃光のハサウェイ』からクスィーガンダムやペーネロペー、『機動戦士ガンダムUC』の劇中では先行稼働試験が行われていたグスタフ・カールが新たに追加されました。

実際は意図的な遅延を行わない限り、クスィーやグスタフ・カールを利用する機会はあまりないのですが、選択肢として選べるだけでもガンダムファンとしては嬉しい要素であると言えるでしょう。

CPUの思考能力の向上

前々作『ジオンの系譜』までは、敵軍は隣接した自軍のエリアの「数」に応じて戦力を増やしていたため、高性能機による単騎防衛が有効でしたが、今作では敵地と隣接した自軍フロア内のユニットの「質」に応じて戦力を増強するようになったため、(依然として単騎防衛は有効なものの)防衛戦の難易度は上昇したと言えます。

また、過去作では重要拠点内の攻防戦で海タイルによって進行を阻まれた機体がその地点にハマるという光景が見られましたが、今作では機体が行き詰まるということもなく、戦力的に不利と判断すれば撤退を行うなど、AIの改善が見られました。

戦略ゲームにおいて頭の悪いAIはゲームの面白さを阻害する要因になりますが、プレイしていてもそういった不満は持ちませんでした。

本作の特徴(無印)

改造コマンドの導入

シリーズ前作『ギレンの野望 ジオンの系譜』や最新作『新ギレンの野望』では実装されていないものの、異色の3作目である『ギレンの野望 ジオン独立戦争記』から輸入されたユニット改造機能が利用できるようになりました。

ユニット改造(改造コマンド)とは、型落ちした機体をその上位機体に変更させるもので、たとえば「ザクⅠ」→「ザクⅡ」に、パイロットを特定のMSに乗せていた場合では「ザクⅡ→ザクⅡ○○専用機」に改造できる要素となっており、それまで廃棄(資源を獲得)するしかなかったような、前線で使用するには役不足となった機体を上位の機体にできるこの要素は、プレイする上でかなり便利な機能です。

残念ながら次回作である『新ギレンの野望』では初代ギレンの野望をベースにしているためこの要素は実装されませんでしたが、本作をプレイする際にはとても便利な機能なので、ぜひ活用してみてください。

アライメントシステムへの変更

前作、前々作で使用されていた「外交」システムが廃止され、新たにアライメントシステムが実装されました。

ギレンの野望シリーズにおける「外交」とは、サイド6や木星船団、『ジオン独立戦争記』ではアナハイム社などの軍事産業会社に対し支援を行うことで見返りを受けるというものでした。

アライメントシステムではそれらの要素が簡易化され、Bad(悪)Low(善の2択になり、民間への支援など人道的な政策を行うことでLowへ、コロニー落としや強化人間計画といった非人道的な行為を行うことでBadへ向かうというものです。

軍の統括として戦争の指揮をするだけでなく、軍事企業との関係を取り持つ必要のあった従来の外交要素に比べてかなり簡素なものとなりましたが、新規の方にとってより分かりやすく、戦争に意識を注力できるという点においては評価できると思います。

問題点

バランスブレイカーな機体の存在

よく引き合いに出されるのが、ジオン公国プレイ時に生産可能な「ドム・キャノン」「ズサ・ブースター」です。

『ギレンの野望 アクシズの脅威』でも調整ミスと思われるバランスブレイカーは存在していましたが、今作でもそれに該当する機体が生まれてしまいました。

「ドムキャノン」

まず、「ドム・キャノン」ですが

同時期に生産される「ドム・トローペン」と比較すると、遠距離攻撃用のツイン・キャノン、隣接戦闘時のミサイルポットの大火力に加え、索敵能力を持ち、低燃費であることが特徴です。

ツインキャノンの176という数値は、射程2以上のものだと相当先に生産可能となるガザD並(ジオン系列なら後述するズサ・ブースター)であるため、いかにこの数値が高いものであるかが分かると思います。また、接近された際の隣接戦闘でも、ミサイルポットの108という数値は、1年戦争終盤に登場する(ドム・キャノン生産後からかなり後の)ゲルググとほぼ同火力となっており、支援機であるにもかかわらず接近戦でもある程度健闘することが可能です。

また、ジオン編後期に生産が可能となる「ゲルググキャノン」ですが、一見ぶっ壊れ性能である「ドム・キャノン」の完全上位互換のようにも見えます。実際かなり高性能であることは間違いないのですが、「ゲルググキャノン」は1機編成であるのに対し、「ドム・キャノン」は3機編成となっているため、単純にゲルググキャノン3機分の火力となります(パイロット搭乗時の補正を除く)。

 

それでもパイロットを乗せての後方支援に回す際や、宇宙で運用する際には「ゲルググキャノン」に軍配が上がりますが、地上での運用では「ドム・キャノン」のほうが勝ることから、比較的早く配備ができ、相当後半まで使いまわせる「ドム・キャノン」がいかにバランスブレイカーであるかが分かると思います。

「ズサ・ブースター」

「ズサ・ブースター」は第二次ネオジオン抗争時に登場したMSです。本機体がバランスブレイカーと言われる理由はその運動性にあります。

まず、前提としてギレンの野望ではMA形態よりもMS形態のほうが運動性は高くなるようになっていますが、「ズサ・ブースター」だけはMA形態のほうがMS形態よりも運動性が高く、移動力、射程2の武装に加え、この時期としてはかなりの耐久力を持っています。

 

同じくアクシズシナリオで最初から生産できる「ガサC」と比較しても、そのどれよりも高い性能となっているため、相対的に割りを食うことになった機体がいくつか生まれてしまいました。本機体の運動性46に追いつくジオン系列の量産機体は、『閃光のハサウェイ』に登場する「メッサ―」のみ(運動性50)であることからもその壊れようが分かると思います。

これらのバランスブレイカーが発生した原因は、主にゲーム開発時の数値の入力ミスやではないかと言われています。

他の機体を使うよりも圧倒的に楽にクリアできることから、縛りプレイをする際には最速で禁止にされるこれらの機体ですが、敵に使われると非常に厄介な機体でもあり、それが逆に刺激になって良いと考えるプレイヤーもいます。

結局のところ利用するかしないかはプレイヤー自身に委ねられているため、本作の初心者に向けた救済措置の一環として考えるのが良いのではないかと思います。

 

指揮バグ

本作における最大のバグともいえるのがこの「指揮バグ」で、本来「指揮」範囲は、①階級によってマップ上の適応範囲が広がり、②指揮、魅力の数値が高いほど範囲内における影響(補正)が大きくなるというものでした。

ですが、今作では

①佐官(少佐~)以上のキャラクターの指揮範囲は総帥と同じ(6マス)になる

➁佐官以上のキャラクターを乗せた機体をスタック(1マスに複数機重ねること)しても指揮効果が適応されない

というバグが発生していました。

これの何が問題かというと、

①指揮範囲が重複した場合、無能な将官(ゴップやワイアット)によって範囲内に低い指揮補正がかけられてしまう

➁分隊指揮を活かせない低階級高指揮キャラの需要が激減

など、指揮バグによってもともと能力の低い高官キャラ、低階級で高い指揮を持つキャラは更に使いづらくなってしまいました。

ですが、反対に指揮バグによって生まれたメリットもあり、

①佐官クラスで高い指揮能力を持つキャラクター(シャア、アナベル・ガトー、ブライト・ノアなど)の需要の上昇

という、一見少ない利点に見えるこのメリットは、各原作において有能なキャラとして描かれることの多い「隊長ポジション」のキャラクターを一層輝かせる要因となっています。

そのため、この「指揮バグ」の存在は一概に悪いバグとは言えず、良くも悪くもゲームバランスを崩していないバグであると言えるでしょう。(バグはないに越したことはありませんが…)

さいごに

今回は前作『アクシズの脅威(無印)』で新実装された機能に加え、そこから『アクシズの脅威v』にかけて変更、改善、新たに発生したバグのみを抽出し、評価しました。今作は前作『アクシズの脅威(無印)』よりも改善された部分が大きかったこと、単純なボリュームとしても今遊ぶなら『アクシズの脅威v』をお勧めします。