新ギレンの野望とは
新ギレンの野望は2011年8月25日に発売されたPSP専用ソフトで、ギレンの野望シリーズ第7作目かつシリーズ最終作(2019年9月17日時点)となる作品です。
今作では「新たに描かれるifの物語」をコンセプトとしており、新要素であるパイロットモードに加え、後述する逆襲のシャア編では、シリーズ最大級となるifストーリーを進むことが可能となっているのが特徴です。
また、アニメーションは第2作『ギレンの野望 ジオンの系譜』から第6作『ギレンの野望 アクシズの脅威v』まで続いたものが差し替えられ、【セガサターン版】ギレンの野望基準となる重量感のあるアニメーションへと進化しました。
本作の特徴(評価点)
正統進化した戦闘アニメーション
前作『ギレンの野望 アクシズの脅威v』まで続いた戦闘アニメーションは、2作目にあたる『ギレンの野望 ジオンの系譜』のものから長年使いまわしされていました。
ですが今作では戦闘アニメーションが一新され、『【セガサターン版】ギレンの野望』を彷彿とさせる重量感のあるものへと変更されたことで演出面がかなり強化され、より臨場感が増しています。
また、νガンダムの「フィン・ファンネル」や、ビグザムの「拡散ビーム」などのマップ兵器にはCGムービーが設けられており、これも演出面の強化につながっています。
パイロットシナリオの実装
『【SS版】ギレンの野望』から前作『ギレンの野望 アクシズの脅威v』まで続いた総帥シナリオに加え、今作ではパイロットシナリオが初登場しました。
パイロットシナリオとは、1年戦争時のアムロ・レイやシャア・アズナブルといった有名パイロットの立場となり、独立の部隊を率いて自軍を勝利に導くモードとなっています。
例えば、アムロ・レイのパイロットシナリオは一年戦争時のものと逆襲のシャア編の2種類があり、それぞれに(特に逆襲のシャア編では多くの)分岐イベントが用意されています。
自分の指揮する部隊だけを操作すれば良いので、比較的操作量の多かった総帥シナリオに比べ、比較的初心者向きと言えるでしょう。
ですが、後述する問題点によりパイロットシナリオの難易度は大きく上がってしまっています。
一枚マップの復活
初代ギレンの野望以来となる一枚マップが復活しました。
前作アクシズの脅威vまでは、小さなエリアごとに分けられ、そこに侵入する/されることで戦闘が起きるようになっていましたが、一枚マップになったことで敵軍の位置をより正確に確認でき、接敵した際の戦闘の判断や補給路の確保など、戦略的にも戦術的にも幅が広がりました。
反面、操作量が増えたことによるプレイヤーへの負担も増えることになりましたが、「委任モード」を用いることで指定した地点へ移動してくれるため、ある程度の負担を減らすことが可能です。
その他
・初代ギレンの野望以来となる生産制限の復活(ガンダムは一体までなど)
・機体装備の攻撃回数の表示
問題点
登場作品の大幅な減少
第2作『ジオンの系譜』から第6作『アクシズの脅威v』にかけ、グリプス戦役や第一次ネオジオン抗争のキャラクター、機体数を徐々に増やしていった過去作と比べて、『新ギレンの野望』でプレイできるシナリオは、1年戦争と逆襲のシャアシナリオのみとなっています。
機体ごとのポリゴンやアニメーションを一から作り直しているため製作上の作業量が大きく、結果として年代を絞ったものと思われますが、相対的に過去作よりもボリュームダウンしてしまいました。
初回購入特典ではZガンダムやZZガンダムなどの機体を利用できることから、売上次第では続編の製作もあり得たのですが…。
不安定なゲームバランス
本作をジオン公国でプレイした方のほとんどを悩ませたのが、第二次降下作戦時の総力戦でした。1年戦争はもともと総力戦だろうと突っ込まれるかもしれませんが、ゲーム上もっとも激しい攻防戦が行われる(と個人的には思っている)のがこの第二次降下作戦です。
第一次降下作戦が大方終了し、第二次降下作戦に移行する6ターン目には、大量の連邦ユニットが待ち構えていました。
また、シリーズに不慣れなプレイヤーはHLVを利用した降下作戦でのみ攻略するため、対空性能の乏しいザクでは連邦の航空ユニットをせん滅するのは難しく、チート性能である対MS用爆撃機「デプロック」との相性も悪いことから、早々に詰んでしまうプレイヤーが後を絶ちませんでした。
これら序盤から大量の生産を行う敵AIと、ゲームバランスを崩壊させる一部ユニットによりシリーズ恒例のシナリオであるジオン編の難度は恐ろしく高いものとなったため、本作の評価を大きく下げる要因となってしまいました。
強気のDLC販売
本作のDLC(ダウンロードコンテンツ)が販売された2011年頃では、DLC販売がまだ基本とはなっておらず、価格設定や内容は手探りの状態でした。
そんな中で1シナリオ200~300円という強気の価格設定がなされた本作では、消費者からの大バッシングを受けることとなり、結果として大きな売上には繋がらなかったと思われます。
もう少し消費者に歩み寄った価格設定が行われていたならば…と思わざるを得ません。
まとめ
久々の完全新作となる今作では、作り直されたポリゴンやアニメーションなど当時のPSP作品としては非常に出来の良いものでしたが、調整不足と思わしきゲームバランス、難易度によってその評価を大きく落とすことになりました。
また、グリプス戦役~第一次ネオジオン抗争のカットや強気過ぎるDLC販売が災いし、結果として続編の可能性も消えてしまいました。
psvita等、数多くのシミュレーション作品が誕生した携帯ゲームの時代が終了した現在では続編を期待することは非常に難しいですが、ボリュームの『アクシズの脅威v』、if展開・アニメーションの『新ギレン』と遊び分けることで、ギレンの野望シリーズを堪能することは可能です。
もし興味を持たれましたら、まずは難易度が程よい『アクシズの脅威v』から始められることをお勧めします。『ギレンの野望 アクシズの脅威v』のレビューの記事も作成しておりますので是非ご参照ください。
*追記(2020年5月30日)
amazonの「PSP版アクシズの脅威v」の中古価格は3000円台となっています。下記の表示価格は新品価格となっていますのでご注意ください。